パートナーの浮気が発覚した人も、自分の浮気がバレてしまった人も、気になるのは慰謝料ではないでしょうか。
- パートナーが浮気をした場合、どれくらいの慰謝料をもらえるのか
- 自分が浮気をして相手にばれてしまった場合、どれくらいの慰謝料を請求されるのか
どちらにしても小さな金額ではないため気になる人も多いでしょう。
浮気に関する慰謝料は様々なパターンがあり、慰謝料が高額になることもあれば全く支払わなくても良い場合もあります。
では、なぜそのようなことが起こるのか、慰謝料に関する全てのことを実例を挙げながら解説していきましょう。
この記事の目次
裁判で浮気の証拠があっても慰謝料を認められない場合もある!時効はいつ?
浮気を実証するには、必ず証拠が必要です。
もちろん、探偵に浮気調査を依頼すれば裁判所で通用する証拠を撮ってもらえるでしょう。
ですが、いくら証拠があっても慰謝料を認められない場合があります。
そこで、まずは
- 浮気が認められ慰謝料を請求できる条件は何なのか
について詳しく解説しましょう。
慰謝料を請求できる条件とは?請求できない時はどんな時?
慰謝料を請求するということは、浮気が成立しなければなりません。
もちろん、浮気をしているという決定的な証拠が必要となりますが、それ以前に慰謝料を請求できる条件というものがあります。
その条件とは、
- 浮気相手に「故意・過失」があった場合
- 浮気により「権利の侵害」を受けた場合
となっています。
また、浮気の証拠があっても慰謝料を請求できない場合は、
- 精神的な損害を補うのに十分な慰謝料をすでに受け取っている場合
- 浮気の時効が過ぎてしまった場合
となっており、浮気ならなんでも慰謝料が請求できるわけではなく、条件を満たしていなければ請求できないのです。
ただ、この解説だけでは少しわかりにくいと思いますので、次項でさらに詳しく解説しておきましょう。
慰謝料を請求できる場合:「故意・過失」「権利の侵害」あり
浮気の証拠があり、慰謝料の請求を裁判で認められる条件の中で「故意・過失」があり、「権利の侵害」を受けた場合とありました。
この「故意」や「過失」、「権利の侵害」とはどのようなことなのかわかりにくいと思いますので、基本的な条件を解説しておきます。
まず、「故意・過失」「権利の侵害」があったと認められる、つまり慰謝料を請求できるのは、以下のような場合です。
慰謝料を請求できる
故意・過失あり
- 既婚者と知っていながら肉体関係を持った場合
- 既婚者と浮気をしていると分かる状況にも関わらず把握していなかった場合
- 既婚者だと分かっていたが、婚姻関係は破綻していると思い込み、状況を確認すれば破綻していないことが分かるのに肉体関係を持った場合
権利の侵害あり
- 肉体関係がなくても、浮気相手とパートナーが夫婦関係を壊すほど親密な交際をしていた場合
- 浮気の不貞行為が原因で円満だった家庭環境が悪化して離婚した場合
慰謝料を請求できない場合:「故意・過失」「権利の侵害」なし
では次に、「故意・過失」「権利の侵害」があったと認められない、つまり慰謝料を請求できないのはどのような場合でしょうか。
慰謝料を請求できない
故意・過失なし
- 互いの素性を知らず、既婚者であることに気付かないまま肉体関係を持った場合
- 脅迫や強姦など、相手の自由意思で肉体関係をもった場合
権利の侵害なし
- すでに共同生活が破綻(別居)しているような夫婦仲の悪さだった場合
このような場合は、浮気として裁判所で通用する証拠があっても、慰謝料の請求は認められません。
浮気の慰謝料請求には時効がある!3年とはどこから数える?
浮気の慰謝料を請求できない場合として「時効」がありました。
時効になると、浮気の慰謝料を請求することが難しくなります。
浮気の時効は3年と言われていますが、実はもう一つ重要な内容があります。
それは、
- あなたがパートナーの浮気を知った時点から3年間
- 浮気が始まった時から20年間
この、①か②、どちらか短い方で時効が完成します。
ですので、浮気の時効は一概に3年とは言えないのです。
例えば…
パートナーが浮気を開始したのが15年前からで、あなたが浮気を知ったのがちょうど15年目だったとします。
あなたが浮気を知って調査などをし、証拠を集めている間もパートナーがそのまま浮気を続けていた場合、おそらく残り5年の20年間浮気を続けることになるでしょう。
そうなると、あなたが浮気を知ってから3年の方が、浮気が始まって20年間経つより早いため、①の期間が時効となります。
このように、①のパターンが短くなることが多いため、浮気の時効は3年と言われるようになったのでしょう。
ですので、時効が成立する前に慰謝料を請求する必要があります。
もし、時効直前に慰謝料を請求する場合は、裁判を起こしたり内容証明を送ります。
時効が成立してしまった後に慰謝料を請求することもできますが、詳しい内容は下記の記事で解説していますのでご参照ください。
-
浮気の認識間違ってない?定義と法律上確認しておくべきこと
浮気は婚姻関係を結んでいる以上、決して許されるものではないという考えの方も多いでしょう。 もちろん、その通りなのですが、一般的な浮気の認識と法律上の認識では食い違っているところも多々あります。 では、 ...
続きを見る
慰謝料は誰に請求する?浮気をしたパートナー?相手?それとも両方?
浮気が発覚すると、まず考えなければならないのが、誰に慰謝料を請求するかです。
請求相手は、
- パートナー(夫・妻)
- 浮気相手
- パートナーと浮気相手の両方
の3パターンになります。
パートナーに請求する場合で最も注意が必要なのが、
- 夫婦関係がまだ破綻していない状態での浮気でなければ慰謝料は請求できない
という点です。
これは、前項でも解説していますのでおわかりかと思います。
もう一度チェック!
次に、浮気相手に請求する場合もそうですが、
- あなたが「故意・過失」「権利の侵害」を受けた場合
に限ります。
最後の、パートナーと浮気相手の双方に慰謝料を請求する場合は、注意が必要です。
注意
パートナーと浮気相手は「共同不法行為者」ということで連携債務を負います。
つまり、浮気の慰謝料が200万円と決まった場合、パートナーに全額200万円支払ってもらうと、浮気相手には1円も請求できません。
もし、双方に慰謝料を支払ってほしいという場合、パートナーと浮気相手双方に100万円ずつなら請求することは可能です。
浮気で取れる慰謝料の相場!こんな相手に請求できる?高額になる理由も
浮気の慰謝料を請求する場合や、逆に支払わなければならない場合、どれくらいの金額になるのか相場が知りたいという人も多いでしょう。
ですが、浮気の場合、一概にいくらと言いにくいのです。
相手が既婚か未婚、未成年などでも慰謝料は変わってきますし、高額になる場合などもあります。
では、一般的な慰謝料の相場、それぞれの条件別で慰謝料は請求できるのか、また高額になるのはどのような時なのかを解説していきましょう。
一般的な浮気で取れる慰謝料の相場は?
一般的な相場は50~300万円程度となっていますが、これより少ない場合もあれば、かなり高額になる場合もあります。
さらに言えば、離婚や別居をする場合の相場は100~300万円ですが、離婚や別居をしない場合は数十万円~100万円程度になります。
もちろん、こればかりではなく、相手の状況や資産、浮気の期間などでも慰謝料は変わってきます。
浮気相手が未成年や無収入、低収入の場合、慰謝料を請求できる?
浮気相手が未成年や無収入や低収入など、慰謝料を請求しづらい相手の場合はどうなるのでしょうか。
浮気相手が未成年の場合
もし、浮気相手が未成年の場合、法律上では未成年者だから慰謝料を支払わなくてよいというわけではありません。
ですが、自分の責任を認識する知識が足りていない場合は慰謝料の支払い義務はなくなります。
一般的なお話しをすると、11歳から12歳程度であれば自分の責任を認識する知識が足りているとみなされます。
ただし、未成年の場合、慰謝料を請求できても支払い能力や資産がないため、本人ではなく両親や兄弟が支払いを肩代わりするよう交渉します。
浮気相手が無収入や低収入の場合
次に、浮気相手が無収入や低収入の場合ですが、未成年と同じく支払い能力がないからと言って慰謝料を支払わなくてもよいというわけではありません。
無収入や低収入の場合は、まず給料明細を確認したり確定申告書を提出してもらい、本当に支払い能力がないか確かめます。
確認した上で支払い能力がないと分かった場合は、将来仕事に就く可能性もありますので、公正証書を作成しておけば、支払い能力が出来た時に慰謝料を支払ってもらえます。
また、相手の支払い能力が低い、もしくはない場合、分割にしたり保証人を付けるのも一つの手です。
公正証書や慰謝料の請求の仕方については、下記の記事で詳しく解説していますので、ご確認ください。
さらに詳しく
浮気相手も既婚者だった場合は慰謝料を請求できない可能性が
浮気の慰謝料を請求する上で、最も面倒で意味がないのが「既婚者どうしの浮気」です。
つまり、「ダブル不倫」という状態の場合、あなただけではなく、浮気相手のパートナーも慰謝料を請求してくることになります。
お互いがお互いの慰謝料を請求しあうことになるのです。
もちろん、お互いの慰謝料を請求しあった結果、慰謝料が同じになるとは限らず、積極的にアプローチした方の慰謝料が高くなることもあるでしょう。
ですが、少し慰謝料が高くなった部分だけをもらえるので、結果的にお互いの間で少ないお金を交換するだけということになりかねません。
ですので、既婚者どうしが浮気をした場合は労力だけがかかり、慰謝料はほとんどないなど、あまり意味のない結果になることがほとんどです。
離婚後でも慰謝料を請求できるのか
結論から言うと、離婚後でも慰謝料を請求することはできます。
ただし、離婚後に慰謝料を請求する場合、下記の条件が必要になります。
- 時効が完成していないこと
- 離婚のきっかけがパートナーの浮気であったこと
- 離婚をする際にパートナーに「慰謝料の請求をしない」など金銭の取り決めを行っていないこと
もし、離婚のきっかけが浮気とは全く関係ない場合は、慰謝料の請求は認められません。
また、浮気よりも他の要因が大きい場合は慰謝料が低くなる可能性もあります。
さらに、「慰謝料の請求をしない」と決めて離婚した場合、慰謝料の請求はとても難しくなります。
金銭の取り決めを行っていなければ、離婚をした時に浮気が発覚していなくても、離婚に合意した事実が違うということで慰謝料を請求できる場合があります。
これら、3つの条件を満たしていれば、離婚後も慰謝料を請求することはできます。
浮気の慰謝料が高額になる要因はこれ!
浮気の慰謝料はおおまかな相場が決まっていますが、これから解説するような内容であればグンと高額になる可能性もあります。
慰謝料をもらう側、支払う側、どちらにも共通することですので、高額になる要因を見てみましょう。
慰謝料が高額になるのはどんな時?
- 浮気が原因で離婚した場合
:精神的な苦痛に対して慰謝する必要があるため - 結婚生活が長かった場合
:結婚生活が結婚生活が長ければ長いほど心の傷は大きくなるため - 浮気の回数が多い/期間が長い場合
:行為が悪質とみなされるため - 浮気と復縁を繰り返した場合
:何度も浮気を繰り返し、そのたびに復縁するのは裏切りの程度が大きいため - 子供がいる場合
:子供にまで精神的苦痛を与えたため - 子供が幼い場合
:子供の年齢が低ければ低いほど精神的に傷付きやすいため - 浮気した側の収入が高い場合
:慰謝料を支払う人の年収が高ければ高いほど支払い能力も高いため - 浮気の証拠が豊富にあるにも関わらず、真摯な謝罪を行わなかった場合
:浮気行為と反省しない態度により二重の精神的苦痛を与えるため - 浮気による被害が大きかった場合
:その他、浮気により大きな被害をこうむったため(ただし、証拠が必要)
浮気の慰謝料が少ない!その理由は?
慰謝料が高額になる一方、ビックリするほど少ないという場合もあります。
ですが、慰謝料が少なくなるのも理由があり、見れば納得ということばかりです。
それでは、なぜ慰謝料が少なくなるのか見ていきましょう。
慰謝料が少額になるのはどんな時?
- パートナーの浮気は事実だが離婚しない場合
:精神的ショックが軽いとみなされるため、離婚する場合の半額以下になる可能性がある - 結婚生活が短い場合
:結婚生活が1~2年程度と短ければショックも小さくて済むと考えられるため - 浮気の回数が少ない、期間も短い場合
:「その場限り」や「魔が差した」とみなされるため、慰謝料が安くなる可能性もある - 浮気の証拠が不完全な場合
:浮気の証拠が不完全だと浮気の立証が難しくなるため
実際にあった浮気の慰謝料の裁判例
では、実際に慰謝料が高額になった裁判例や、逆に金額が低かった時の裁判例などをご紹介しておきましょう。
これまでの解説が、より具体的にわかるかと思います。
慰謝料が高額になった浮気の裁判例
まずは、1,000万の慰謝料を請求し、満額支払われたケースになります。
慰謝料1,000万円の裁判例
概要 | 夫の浮気に加え暴力があった |
---|---|
結婚期間 | 30年 |
浮気期間 | 不明 |
慰謝料(請求) | 1,000万円 |
慰謝料(支払) | 1,000万円 |
その後の動向 | 不明 |
この場合、不貞行為だけではなく、暴力によってケガをしており、精神的苦痛だけではなく、肉体的苦痛を伴っているため、高額支払いとなりました。
続いて、500万の慰謝料請求に対し、実際は1,000万円支払われたケースです。
慰謝料500万円(支払1,000万円)の裁判例
概要 |
|
---|---|
結婚期間 | 35年11カ月 |
浮気期間 | 14年 |
慰謝料(請求) | 500万円 |
慰謝料(支払) | 1,000万円 |
その後の動向 | 離婚をせず別居のみ |
妻の承諾なく離婚届を出していたため、合意のない離婚ということで取り消され、浮気相手との婚姻も取り消しとなりました。
夫の非は大きく、500万円の慰謝料という裁判所の命令でしたが、実際には1,000万円支払われています。
慰謝料が少額になった浮気の裁判例
浮気の慰謝料が高額になる一方、「え?こんなに少ないの?」という裁判例もあります。
では、どのような場合に少額になるのか裁判例を見てみましょう。
慰謝料150万円の裁判例
概要 |
|
---|---|
結婚期間 | 10年 |
浮気期間 | 4カ月 |
慰謝料(請求) | 150万円 |
慰謝料(支払) | 150万円 |
その後の動向 | 子供のために離婚はしていないが別居状態、夫婦関係は破綻 |
浮気の期間が短く、浮気してから謝罪があったなど、減額要素があるため、離婚の場合よりやや少ない150万円になりました。
浮気の慰謝料を支払わなくて済むのはこんな場合
浮気の慰謝料を支払わなくても済む場合というのは、基本的には「裁判で浮気の証拠があっても慰謝料を認められない場合もある!時効はいつ?」で解説した通りです。
もう一度チェック!
つまり、
- 互いの素性を知らず、既婚者であることに気付かないまま肉体関係を持った場合
- 脅迫や強姦など、相手の自由意思で肉体関係をもった場合
- すでに共同生活が破綻(別居)しているような夫婦仲の悪さだった場合
これらの条件以外の場合は、支払い能力がなくても、未成年でも、無職でも支払い義務はあるわけです。
ですので、浮気をしているほとんどの人に支払い義務があると思っていた方がよいでしょう。
浮気の慰謝料を高額請求したいなら弁護士もあり!
浮気の慰謝料請求は、弁護士を挟まず当事者同士で解決することもできますが、金額を提示した途端にトラブルになることも多々あります。
ひどい場合、浮気を認めないこともありますので、できれば弁護士を仲介した方が話はスムーズに進みますし、慰謝料を相場より高く取れる場合もあります。
浮気の慰謝料の話し合いは泥沼になることも多々ありますから、浮気で傷ついた心をさらに傷つけることにもなりかねません。
ですので、自分の心を守り慰謝料を高く取りたい場合は、弁護士を利用するのも良いでしょう。
ただし、慰謝料がさほど取れない事例の場合、弁護士費用の方が高くついてマイナスになってしまう可能性もあります。
それでも「お金のことよりパートナーや浮気相手を懲らしめたい!」ということであれば弁護士に依頼するのも良いでしょう。
浮気の慰謝料は状況によってかなり違ってくる
浮気の事例や、高額になる場合・少額になる場合など、解説を見ればお分かりかと思いますが、状況によって金額が大きく変動します。
どんな事例を見ても、今のあなたの状況と全く同じというものはないでしょう。
それほど、浮気は千差万別で状況は様々です。
慰謝料の金額はあくまで目安として理解しておけばよいでしょう。
あわせて読みたい
慰謝料額の見当はついたでしょうか?
最初にも書きましたが、相手の浮気を理由に慰謝料を請求する場合、まずは確実な証拠が必要となります。
浮気の証拠をつかむためのノウハウをこちらの記事で解説していますので、法廷で戦える証拠がまだ手元にないという方はぜひ参考にしてみてください。